「日銀がマイナス金利」、今日の日経新聞の夕刊のトップ記事です。
長期金利は一時0.09%まで低下し、過去最低の水準を更新したようです。
金利低下に伴い、既に市場に出回っている国債の価格は上昇するわけですが、公益法人が国債を売却した場合の会計処理について書きたいと思います。
国債などの債券については、会計処理の分類上「満期保有目的の債券」として保有しているケースがほとんどだと思います。
※満期保有目的の債券
「満期まで所有する意思を持って保有する社債その他の債券のこと」とされています。端的に言うと、満期前の売却について、予定もしていなければ、資金繰り上から必要になることもない、ということです。
償還期限前に売却した場合の注意点
満期保有目的の債券を償還期限前に売却した場合には、以下の点に注意が必要です。
1.他の満期保有目的の債券は時価評価が必要になる
2.新規取得債券の満期保有目的の債券への区分不可(売却年度含め2事業年度間)
これは、満期前の売却により「保有目的」の変更があったものとされてしまうからです。
ただし、債券の発行者の信用リスクが著しく高まった場合や、法令の改正があった場合など外部要因による売却の場合は、満期保有目的の債券のままで良いとされています。
具体的な取り扱い
以下の事例をもとに、具体的な取り扱いについて確認しましょう。
事例: 次の債券を基本財産(一般正味財産)として保有
国債A(期間10年・満期5年後) 取得価額10,000 期末時価10,100
国債B(期間20年・満期5年後) 取得価額20,000 期末時価20,500
売却せず期末まで保有している場合
【決算書】
貸借対照表: 基本財産-投資有価証券 30,000
注記 : 満期保有目的の債券の内訳並びに帳簿価額、時価及び評価損益
国債A(期間10年) 帳簿価額10,000 時価10,100 評価損益100
国債B(期間20年) 帳簿価額20,000 時価20,500 評価損益500
※注記は上記以外に、有価証券の評価基準及び評価方法についても必要です。
満期保有目的の債権の帳簿価額は、取得時の価額とされています。
よって、期末時点の時価で評価する必要はなく、注記に時価と評価損益を開示することで足ります。
期中に国債Aを10,100で売却した場合
【売却時の仕訳】
[借方] 現金預金 10,000 [貸方] 基本財産-投資有価証券 10,000
[借方] 現金預金 100 [貸方] 基本財産-投資有価証券売却益(一般) 100
【決算書】
貸借対照表: 基本財産‐投資有価証券 20,500 ※国債B分
損益計算書: 基本財産-投資有価証券売却益(一般) 100 ※国債A売却分
基本財産-投資有価証券評価損益等(一般) 500 ※国債B時価評価分
注記 : (有価証券の評価基準及び評価方法についてのみ)
満期の到来前に売却したことにより、他の満期保有目的の債権について保有目的の変更があったものとみなされるため、時価評価が必要になります。
なお、今回のマイナス金利の導入に関してですが、マスコミによるとこれまで日銀の黒田総裁は、マイナス金利の導入は考えていない、と発言していたようです。
「考えていない」という表現は、やらないということまでは包括しない表現ですね。(笑)