実態確認に重点を置いた確認項目 ~立入検査チェックリスト・滋賀県編~

以前に公益法人の立入検査対策として、行政庁から公開されている資料とチェックリストの概要について記載しました。

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今回は、以前紹介した資料のうち、滋賀県のチェックリストについてみていきます。

 ※ 滋賀県・立入検査チェックリスト ※資料の7~30頁目 全24頁

全24頁で構成されるチェックリストで、ボリュームが多い点や、「公益認定法第5条の認定基準」、「公益目的事業のチェックポイント1~18」に沿ってチェック項目が掲げられている点は、鹿児島県のチェックリストと同じです。

全体的には、申請書等提出されている資料の記載内容と、実態との整合性に関し重点を置いた確認項目になっています。

初めに全体の構成について確認したのち、各チェック項目の概要と気になった点について記載します。

 

全体の構成

A 法人の目的、チェックポイント
B ガバナンス
C 社員の資格得喪
D 社員と社員総会
E 役員等と理事会、評議員会
F 任意設置機関
G 欠格事由の確認
H 理事と特別の関係ある者
I 同一団体の範囲
J 財産の贈与・帰属先
K 変更等に関する状況
L 資料の備置きと公開状況
M 所得控除と税額控除
N 会計監査人の設置
O 経理的基礎及び技術的能力
P 役員等の報酬等の支給基準
Q 他の団体の意思決定に関与できる財産
R 不可欠特定財産
S 公益目的事業財産
T 特別の利益
U 公益法人にふさわしくない事業の実施
V 収支相償
W 公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれ
X 公益目的事業比率
Y 遊休財産額の保有の制限
Z 定期提出書類の状況

 

各チェック項目

A 法人の目的、チェックポイント

 認定申請時の書類や定期報告書等の内容と、運営の実態が一致しているかについての確認項目です。「公益目的事業のチェックポイント1~18」について、項目ごとにすべて記載されているため、かなりのボリュームになっています。

気になった項目としては、税務上の収益事業を公益目的事業としている場合には、事業の一体性と対価が実費弁償程度のものか確認するとされています。

B ガバナンス

事業・組織体系図や職員数について、提出済み書類との整合性を確認する、といいった項目が記載されています。

C 社員の資格得喪

社員の議決権行使に関し公平性が保たれているかについて定款や議事録等で確認する、といった項目が記載されています。

D 社員と社員総会

社員と社員総会について、法令や定款に則し運用されているか定款や議事録等で確認する、といった項目が記載されています。また、代議員制を採用している場合の定款記載事項に関する項目もあります。

E 役員等と理事会、評議員会

役員等と理事会、評議員会について、法令や定款に則し運用されているか定款や履歴書、議事録等で確認する、といった項目が記載されています。

F 任意設置機関

法律上権限のない任意の設置機関について、役員や理事会等の権限を侵していないか定款や諸規程等で確認するとされています。

G 欠格事由の確認

役員等について欠格事由に該当しないかについて、履歴書、宣誓書、議事録等で確認する、といった項目が記載されています。

H 理事と特別の関係ある者

「同一親族1/3規定」に関し名簿・履歴書・誓約書等で確認する、といった項目が記載されています。

I 同一団体の範囲

「同一団体1/3規定」に関し名簿・履歴書・誓約書等で確認する、といった項目が記載されています。

J 財産の贈与・帰属先

認定取消や清算時の残余財産の贈与先に関する取扱について定款で確認すると記載されています。

K 変更等に関する状況

事業の実施区域や公益目的事業の内容等について、変更認定・届出が必要な状況にないか関係資料等で確認する、といった項目が記載されています。

L 資料の備置きと公開状況

必要資料の備置き状況と、掲示状況(掲示する方法を採用している場合)について確認するとされています。

M 所得控除と税額控除

寄附金受領時の領収書や、税額控除対象法人の場合の税額控除証明書の交付状況について確認する、といった項目が記載されています。

N 会計監査人の設置

監査人設置の必要性のほか、必要な場合の契約状況について契約書等で確認すると記載されています。

O 経理的基礎及び技術的能力

<経理的基礎>
現預金の管理や、財務諸表と帳簿の整合性、補助金事業の処理の適正性に関する項目などが記載されています。

なお、気になった項目をいくつか記載します。

・予算管理 → 執行超過の扱いや予算策定規程の有無など実効性の観点からの項目があります。(鹿児島県も同一の項目あり)

・自主財源 → 自主財源の確保に向けた取り組みについての項目があります。

・受託事業 → 受託事業や指定管理事業がある場合に、契約満了に伴い公益目的事業の実施が困難にならないかについての確認項目があります。

・引当金  → 引当金に見合う特定資産が計上されていない場合に、理由や見通しについての確認するとされています。

・福利厚生費→ 給与手当の計上なく福利厚生費が計上されている場合、妥当性を確認するとされています。

<技術的能力>
外部への丸投げの事実を確認する観点から、契約台帳や契約書を確認すると記載されているほか、委託費・外注費等が500万円を超える場合は取引内容を確認する、といった項目が記載されています。

P 役員等の報酬等の支給基準

報酬規程と支給実態の整合性について確認する、といった項目が記載されています。

気になった項目としては、使用人兼務役員に対し、使用人としての給与のみを支給している場合の合理性について、勤務実態等を確認するとされていました。

Q 他の団体の意思決定に関与できる財産

他の団体の意思決定に関与できる株式等を保有していないかについて、財産目録や株主名簿等で確認するとされています。

R 不可欠特定財産

不可欠特定財産が申請書の記載どおりに使われているかについて確認する、といった項目が記載されています。

S 公益目的事業財産

公益気目的事業財産が公益目的事業に使用されているかについて、財産目録等の記載内容を現物で確認する、といった項目が記載されています。

T 特別の利益

役員等に特別の利益を与えている事実がないか、帳簿等で確認するとされています。

気になった項目としては、発注事業について毎年特定の事業者と契約している場合には妥当性を確認するとされています。

U 公益法人にふさわしくない事業の実施

投機的な取引等を行っていないか、取引関係書類等で確認するとされています。

V 収支相償

収益事業からの繰入額の妥当性についての確認のほか、公益目的事業で剰余金が生じた場合の対策として、金融資産の取得をした場合に、運用益の公益目的事業への充当計画の妥当性について確認することとされています。

W 公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれ

収益事業の実施状況に関する項目で、新たな収益事業を開始した場合には、公益事業への影響について納税申告書等により確認する、といった項目が記載されています。

X 公益目的事業比率

公益目的事業費の計上額の妥当性や、「みなし費用」の算定方法について根拠資料で確認する、といった項目が記載されています。

Y 遊休財産額の保有の制限

主に控除対象財産について、使用状況や取り扱いが適切か確認する、といった項目が記載されています。

Z 定期提出書類の状況

事業計画書や事業報告の作成時期や機関承認の状況等について、稟議書や議事録等で確認するとされています。

 

チェックリストの形式

最後にチェックリストの形式についてですが、「適」・「不適」のいずれかにチェックする形式になっています。