収支相償対策。まずは収益・費用の内容と計上方法を確認!

公益目的事業が黒字決算になりそうだがどうしたらいいか。
過去2年連続の黒字で、このままでは今期も・・。

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA

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収支相償がクリアできず、頭を悩ませている公益法人の方々は少なくないと思います。

この収支相償要件が理由で、一般法人を選択した法人も相当数あったと思いますし、現に公益法人化をためらっている法人もあります。さらには、公益認定の返上まで検討している法人もあるとか・・。

そこで今回は、収支相償対策について検討の流れとポイントについて書きたいと思います。

事業継続に余剰(黒字)が必要なのは、営利法人も非営利法人も同じ。
事業規模を変えず運営するにせよ、適正な利益を生み出せなければ現状維持も不可能です。

収支相償対策をスッキリ整理し、本来のミッション達成に向け注力いただきたいと思います。

 

<収支相償対策の検討の流れ>

収支相償対策はいくつかありますが、次に紹介する順に検討いただければと思います。

 

1.収益・費用についての確認と検討

収支相償は、公益目的事業の収支差額でまず判断しますが、言うまでもなく収益と費用の差額が収支差額です。よって、収益と費用の内容と計上方法を確認するとともに、収支差額を減らせる方法がないか検討します。

 

2.黒字の原因と今後の事業計画の確認

黒字の発生が、恒常的な原因によるものか一時的なものか確認します。恒常的な原因による場合は、抜本的な対策の検討が必要ですが、一時的な場合には、翌期の使途計画を説明できればクリアできます。

 

3.公益目的保有財産の検討

公益目的保有財産の取得に充てる場合には、収支相償をクリアしたものとされます。公益目的保有財産は、車両やソフトウェアなどの有形・無形の固定資産のほか、金融資産も想定されていますが、金融資産の場合には要件が厳しくなります。

 

4.特定費用準備資金と資産取得資金の検討

上記1~3で収支相償をクリアできない場合には、特定費用準備資金と資産取得資金について検討することになります。ただ、資金の使途計画を中心に法令上の制約が多いため、活用は最小限にとどめたいところです。

 

<具体的なポイント>

上で示した対策のうち、今回はボリュームの関係上1についてのみ紹介し、2~4についてはあらためて書きます。

 

1.収益・費用についての確認と検討

収益と費用について、公益目的事業の収支差額を減らせる方法がないか確認します。

(1)収益項目

法人会計や指定正味財産に計上できるものはないか、次の取扱いについて確認してみましょう。

① 公益目的事業のみ実施している場合(収益事業等なし)

  公益目的事業の収益を法人会計に付け替え可能(法人会計での必要額が限度)

② 寄附金や賛助会費など対価性のない収益

  使途の特定を前提に、指定正味財産や法人会計に計上可能

※使途の特定とは、寄附者によって寄附金の指定されていることをいいます。
例えば、「法人会計の管理費」や、「普及啓発事業(公益事業)」のための寄附金などです。

この場合、前者であれば法人会計、後者は公益目的事業の指定正味財産に計上することになり、いずれも、収支相償の判定対象になる収益からは除外されます。

なお、公益法人が使途の定めのない寄附金等を受けた場合には、原則として、公益目的事業で収益計上する必要がありますので注意が必要です(社団法人の通常会費を除く)。

しかし、使途の特定がある場合には前述のとおりそれに従うことになるため、これを踏まえ寄附金や賛助会費を募集し受け入れることで、収支相償要件をクリアし易くなります。

 

(2)費用項目

各会計・事業に共通する費用は配賦可能ですが、配賦基準の算定の手間などを理由に配賦しない場合には、法人会計に計上せざるを得ません。

以下に実際の相談事例であった、法人会計に全額計上していたものの例と、対処の仕方について挙げますので、同様の視点から検討してみましょう。

① 役員の人件費

役員でもマンパワーの問題などから公益目的事業に携わっているケースは少なくないと思います。この場合には役員の人件費について従事時間をベースに公益目的事業に配賦できます。

② 総務・経理スタッフの人件費

総務などの間接部門の人件費を法人会計に全額計上しているケースを見かけます。
事業との直接的な関わりがなくても、例えば、公益目的事業のセミナーの準備や、入出金の管理を行うことは想定され、この場合には、公益目的事業への配賦は可能と考えられます。