前回は公益法人の立入検査対策として、行政庁から公開されている資料とチェックリストの概要について記載しました。
今回は、前回紹介した資料のうち、鹿児島県のチェックリストについてみていきます。
全33頁と非常にボリュームのあるチェックリストで、「公益認定法第5条の認定基準」や「公益目的事業のチェックポイント1~18」にそってチェック項目が掲げられています。
初めに全体の構成について確認したのち、各チェック項目の概要と気になった点について記載します。
全体の構成
- 公益認定の基準
- 経理的基礎及び技術的能力
- 特別の利益
- 公益法人にふさわしくない事業の実施
- 公益目的事業の収入
- 公益目的事業の実施に影響を及ぼすおそれのあるもの
- 公益目的事業比率
- 遊休財産の保有制限
- 理事と特別の関係がある者
- 同一団体の範囲
- 会計監査人の設置
- 役員等の報酬の支給基準
- 社員等の資格得喪に関する条件等と他の団体の意思決定に関与できる財産
- 不可欠特定財産
- 財産の贈与・帰属先
- 公益目的事業財産
- 社員と社員総会
- 評議員と評議員会
- 役員等と理事会
- 組織とガバナンス
- 定期報告書関係
- 変更等に関する状況
- 臨時の立入検査
- その他(命令・指導後の状況、認定取消、合併)
- 欠格事由
- 資料の備置きと公開状況(主たる事務所)
- 資料の備置きと公開状況(従たる事務所)
1~16 → 公益認定法第5条と公益目的事業のチェックポイント関連
17~20 → 機関・組織関連
21~27 → 手続きや備置き資料など
各チェック項目
1.公益認定の基準
認定申請時の書類や定期報告書等の内容と、運営の実態が一致しているかについての確認項目です。「公益目的事業のチェックポイント1~18」について、項目ごとにすべて記載されているため、かなりのボリュームになっています。
具体的には「検査検定」では、検定の機会が一般に開かれているかパンフレット等で確認する、などの項目が記載されています。
2.経理的基礎及び技術的能力
まず、経理的基礎については、
現預金の管理や、財務諸表と帳簿の整合性、補助金事業の処理の適正性に関する項目などが記載されています。
なお、気になる点は、予算管理に関するもので、執行超過の扱いや予算策定規程の有無など実効性の観点からのチェック項目があることです。(滋賀県も同一の項目あり)
次に、技術的能力については、
外部への丸投げの事実を確認する観点から、契約台帳や契約書を確認することなどが記載されています。
3.特別の利益
役員等に特別の利益を与えている事実がないか、帳簿等で確認するとされています。
4.公益法人にふさわしくない事業の実施
投機的な取引等を行っていないか、関係書類のほかヒアリングで確認すると記載されています。
5.公益目的事業の収入
収支相償に関する項目で、収益事業からの繰入額の妥当性確認などの項目が記載されています。
6.公益目的事業の実施に影響を及ぼすおそれのあるもの
収益事業の実施状況に関する項目で、新たな収益事業を開始した場合には、公益事業への影響について納税申告書等により確認する、といった項目が記載されています。
7.公益目的事業比率
公益目的事業費の計上額の妥当性や、「みなし費用」の算定方法について根拠資料で確認する、といった項目が記載されています。
8.遊休財産の保有制限
主に控除対象財産について、使用状況や取り扱いが適切か現場で確認する、といった項目が記載されています。
9.理事と特別の関係がある者
「同一親族1/3規定」に関し名簿・履歴書・誓約書等で確認する、といった項目が記載されています。
10.同一団体の範囲
「同一団体1/3規定」に関し名簿・履歴書・誓約書等で確認する、といった項目が記載されています。
11.会計監査人の設置
監査人設置の必要性のほか、必要な場合の契約状況について契約書等で確認すると記載されています。
12.役員等の報酬の支給基準
報酬規程と支給実態の整合性について支給明細で確認する、といった項目が記載されています。
13.社員等の資格得喪に関する条件等と他の団体の意思決定に関与できる財産
社員の議決権行使に関し公平性が保たれているかについて定款や議事録等で確認する、といった項目が記載されています。
14.不可欠特定財産
不可欠特定財産が申請書の記載どおりに使われているかについて確認する、といった項目が記載されています。
15.財産の贈与・帰属先
認定取消時の贈与先に関する定款規定の確認のほか、定款改定の有無について議事録で確認すると記載されています。
16.公益目的事業財産
公益気目的事業財産が公益目的事業に使用されているかについて、財産目録等の記載内容を現物で確認する、といった項目が記載されています。
17.社員と社員総会
社員と社員総会について、法令や定款に則し運用されているか定款や議事録等で確認する、といった項目が記載されています。
18.評議員と評議員会
評議員と評議員会について、法令や定款に則し運用されているか定款や履歴書、議事録等で確認する、といった項目が記載されています。
19.役員等と理事会
役員等と理事会について、法令や定款に則し運用されているか定款や履歴書、議事録等で確認する、といった項目が記載されています。
20.組織とガバナンス
項目が多岐にわたるため、以下箇条書きにします。
・任意機関の選任の適正性 → 議事録等で確認
・内部監査の適正性 → 抜き打ち監査を行いうる状況か、内部告発の場合に保障されているかなど
・諸規則の整備と運用状況 → 整備状況の確認と運用状況との整合性確認
・税務申告の適正性 → 税務申告書で確認
・就業規則の整備状況 → 就業規則の作成、改定、届出状況について各種届出書で確認
・法人印の管理状況 → 保管、使用規程の整備状況と、保管状況の確認
・経理処理体制の適正性 → 担当者と管理者が区別されているか組織図等で確認
なお、気になる点は、事務所を法人の支援団体から無償で借り受けている場合に、その貸主に特別な利益が発生していないか帳簿等で確認する、とされていることです。かなり具体的な項目だと思います。
21.定期報告書関係
事業計画書や事業報告について適切に機関承認を受けているか等について、議事録等で確認するとされています。
22.変更等に関する状況
事業の実施区域や公益目的事業の内容等を変更している場合に、その実態を確認するとされています。
23.臨時の立入検査
(一般法人に対するチェック項目のため、公益法人は関係ありません)
24.その他(命令・指導後の状況、認定取消、合併)
命令や指導等を受けていた場合の改善状況や、合併があった場合の契約の適正性等について合併契約書等で確認する、といった項目が記載されています。
25.欠格事由
役員等について欠格事由に該当しないかについて、履歴書、宣誓書、議事録等で確認する。といった項目が記載されています。
26.資料の備置きと公開状況(主たる事務所)
主たる事務所について、必要資料の存在確認と、備え置き場所を確認するとされています。
27.資料の備置きと公開状況(従たる事務所)
従たる事務所について、必要資料の存在確認と、備え置き場所を確認するとされています。
チェックリストの形式
最後にチェックリストの形式についてです。
左から「検査項目」「評価」「Cの場合は理由」と項目が並び、評価欄には以下のとおり状況に応じA、B、Cのいずれかを記載する形式になっています。
A: 改善の必要のないもの
B: より適切な法人運営という視点から改善を加えたほうがよいもの
C: 法令や定款等に反するなど早急な改善が必要なもの