と同時に、今期の決算見込みを算出し、
予算の執行予測を立てる時期でもありますね。
予算どおりの決算見込みであれば、
一般的には問題なさそうですが、
予算どおりでは大問題になってしまうケースや、
逆に予算を達成しなくても
大した問題にならないケースがあります。
正味財産の増減額(収益と費用の差額)を例に、3つのケースでみてみましょう。
ケースごとに予算額は変えていますが、決算見込み額はすべて同額です。
【例1】予算に対し、収益・費用ともに少なく、増減額も少ないケース
予算 決算見込み 差異
収益 13,000 10,000 3,000
費用 11,000 10,000 1,000
増減額 2,000 0 △2,000
⇒ 増減額が予算よりも少ないため、問題あるように見えます。
しかし、
予算を意欲的に、つまり高い収益目標を前提に策定していた場合はどうでしょう。
決算見込みは増減ゼロですし、今期の反省を来期の戦略に活かすということで、
まあ良しという見方もあるかもしれません。
【例2】予算に対し、費用のみ少なく、増減額は多いケース
予算 決算見込み 差異
収益 10,000 10,000 0
費用 12,000 10,000 2,000
増減額 △2,000 0 2,000
⇒ 増減額が予算よりも多いため、予想外のいい状況に見えます。
しかし、
予算を保守的に、つまり費用を手厚く見込み策定していた場合はどうでしょう。
決算見込みは増減ゼロですので、まあ良しとなるかもしれませんが、
仮に予算どおりに増減額がマイナスになっていたら大変です。
【例3】全て予算どおりのケース
予算 決算見込み 差異
収益 10,000 10,000 0
費用 10,000 10,000 0
増減額 0 0 0
⇒ 予算をどのように策定しているか、言い換えれば、予算の位置づけ方によりますが、まあ良しとの見方が多いかもしれません。
上記の3つのケースをもとに記したとおり、
予算と決算の差異だけを見ても善し悪しの判断はできず、予算の位置づけによって、
差異の捉え方が全く異なることがお分かりになると思います。
上記それぞれのケースをもとに、予算の位置づけについて分類すると以下のとおりです。
【例1】 ⇒ 目標型予算
事業の規模拡大等を前提に収益の目標を立て、それに応じ費用を予算立てする考え方で、
計画がほぼ思惑通りに進むような「ベストプラクティス」を数値化した予算といえます。
一般的には、規模拡大型の営利企業にみられる予算です。
この目標型予算とする場合には、
合わせて、より達成の実行性が高い「岩盤」の予算を策定しておくことをお勧めします。
いうまでもありませんが、一般的には思惑通りに進むことの方が稀です。
目標型予算をもとに資金繰りを考えていたら、思惑通りに進まず資金繰りが危うい状況に、なんてことになってしまっては困ります。
【例2】 ⇒ 支出統制型予算
法人の事業は、機関承認が得られた予算の範囲内で行うべきで、費用の執行超過(決算が予算を上回ること)はあってはならない、という考え方に基づく予算です。
一般的には、社会福祉法人などに多く見られる予算ですが、公益法人や一般法人(公益法人等)でも、この考えに基づいて予算を策定しているケースが少なからずあります。
この場合、費用は実際の見込み額に上乗せして予算を立てることになり、予算の管理は、費用の執行状況の確認が重視されることになります。
この支出統制型の予算とする場合も、
合わせて、より実行性の高い予算を策定しておくことをお勧めします。
【例3】 ⇒ 実行性重視型予算
収益も費用も、現実的で実行性の高い予算とする考え方です。
会員やセミナー参加者の増加による増収を見込むこともあると思いますが、前年比で数パーセント程度の増加であれば、実行性の高い予算という見方になるかもしれません。
公益法人等の多くは、この実行性重視型で予算策定しているケースが多いようです。
もっとも、公益認定基準(主に財務三基準)や、公益目的支出計画を考慮すれば、この考え方に基づき予算策定するのが適していると思います。
終わりに
この予算の位置づけについての理解は、法人の予算策定に、ある程度の期間携わっている方であれば、当たり前のことかもしれません。
しかし、日が浅く、法人の策定方針に馴染んでいない方や、新しく役員等になられた方には、まず、予算の位置づけについて確認、または周知されることが欠かせません。
予算策定に携わる方が確認することは勿論、承認又は報告を受ける方々とも、予算の位置づけについての共通理解を図ることが、予算策定の第一歩です。
位置づけを知らずに予算は立てられませんし、実績との対比もやりようがありません。