公益法人の立入検査対策 まずは公開資料とチェックリストを確認

立入検査で何がチェックされるのか、どんな準備をしたらいいのか、
こういった疑問や不安は、公益法人の方々にとってはつきものだと思います。

一回でも受けてしまえば、特別な問題でもない限り、それ以降不安に思うことはないと思いますが、未だ検査を受けたことのない法人にとっては、不安の種であることは確かでしょう。

「立入検査あったけど特に問題なかったよ」なんて話を聞いても、安心するどころか、「でも、うちは大丈夫か」、といった具合に不安が消えることはないと思います。

そこで、未だ立入検査を受けたことのない公益法人の方々向けに、現時点(H28.1/20)で行政庁から公開されている資料やチェックリストについて、その概要や内容等を数回に分けて記載していきたいと思います。(あまりにもボリュームが多いので)

「見えない不安」の緩和に、少しでもお役に立てればと思います。

 

公開されている資料とチェックリスト

行政庁から公開されている立入検査関連の主な資料やチェックリストは次のとおりです。

立入検査関連資料

1.内閣府 監督の基本的考え方

2.内閣府 立入検査の考え方

3.内閣府 法人運営における留意事項 ~立入検査における主な指摘事項を踏まえて~

※上記1.2については、内閣府以外の行政庁からも同様の考え方が示されています。

 

立入検査チェックリスト

4.京都府 立入検査チェックリスト ※資料の64~73頁 全10頁(事業報告分含む)

5.滋賀県 立入検査チェックリスト ※資料の7~30頁目 全24頁

6.鹿児島県 立入検査チェックリスト ※全33頁

※内閣府については今のところ公開していません。

 

1.内閣府 監督の基本的考え方

監督の基本的考え方として次の4つの項目が記されています。

① 法令に基づく監督

法令で明確に定められた要件に基づき監督するということで、旧主務官庁下の裁量行政からの脱却を意図しています。根拠のない不毛な指摘をしない、ということだと思います。

② 支援の視点

法人自治を大前提とし、新制度に対応できるよう支援の視点を持つとされています。「公益の増進」という同じ目的に向かって進むということでしょう。目的に整合しない意味のない指摘はなくなると思います。

③ 問題法人への厳正対処

制度の信頼確保のため、問題ある法人には迅速かつ厳正に対処するとされています。制度維持にあたっては不可欠のことと思います。

④ 実態を把握

認定審査、定期書類確認、立入検査などあらゆる機会を活用し、実態を把握することとされています。実態の把握なしには実効性ある監督などできませんね。

 

2.内閣府 立入検査の考え方

前述の監督の基本的考え方をもとに、立入検査の考え方として次の5つの項目が記されています。

① 必要な範囲

適正な運営を確保するため必要な範囲において、遵守事項について運営実態を確認するという観点から行う、とされています。

② 3年を目途に一巡

概ね3年を目途に一巡させ、運営状況に応じた柔軟な検査計画を作成。検査通知は1か月前までに通知するとされています。

③ 求められれば説明

法人から要請があった場合などには、支援の観点から、制度の詳細について説明等を行う、とされています。法令に基づく検査である以上あたりまえのことですが、敢えて記載しているところに強い意志を感じます。

④ 実地ならではの事項に重点

審査時の書類をはじめ定期書類等、得られた情報を活用し、実地ならではの事項に重点を置き検査を行う、とされています。これも当たり前のことですね。

⑤ 適時適切に実施

欠格事由等に関連する問題点が発覚した場合には、適時適切に立入検査を実施する、とされています。制度の信頼性確保のためには欠かせませんね。

 

3.内閣府 法人運営における留意事項
  ~立入検査における主な指摘事項を踏まえて~

過去の指摘事項のうち、多くの法人に共通しそうな事項について、項目ごとに取りまとめられています。

<機関運営関連>

① 理事会と総会(評議員会)の同日開催は不可。
→ 中2週間以上開ける必要あり。

② 総会(評議員会)の招集手続きの省略時に、理事会決定されていない。
→ 理事会での招集の決定が必要(ただし、決議の省略は可能)。

③ 総会(評議員会)の招集通知に計算書類等がない。
→ 理事会承認を受けた計算書類等の提供が必要。

④ 業務執行理事等の職務執行報告が行われていない。
→ 報告が必要で、「報告の省略」規定の適用対象外。

⑤ 役員の選任の一括決議
→ 一人ひとり個別に決議する必要あり。

⑥ 議事録の作成、保存に不備あり
→ 記載事項や、記名・押印等について要確認。

<手続関連>

⑦ 変更認定申請の必要性が判明したケース
・認定受けた事業を実施しておらず、今後の予定もない
・新たな事業を実施していた

⑧ 変更届出の必要性が判明したケース
・役員の選任、退任等
・役員報酬の支給基準が変更されていた
・事務所所在地が変更されていた

<事業運営関連>

⑨ 資格付与事業の審査に関与する者の専門性が不明確

⑩ 役員報酬規程等、必要書類が備え置かれていない

<財務・会計関連>

⑪ 役員報酬規程上は無報酬と規定されているが、実態は一定額の支給あり

⑫ 積算根拠が不明な交通費等の支給あり

⑬ 勘定科目の誤り

 

4~6.公開されているチェックリスト

チェックリストに関しては、次回以降、あらためて記載します。

それぞれのチェックリストは、見た目のボリュームと項目の整理の仕方に違いはありますが、基本的には同じような内容です。

なお、肝心かなめの内閣府ですが、前述のとおり、基本的なスタンスや指摘事例は示しているものの、具体的な確認項目を記したチェックリストは今のところ公開していません。

「うちの行政庁は内閣府だが、他のチェックリストは役に立つのか」といった疑問もおありと思いますが、以下の理由から、十分参考になると思います。

・制度運営にあたり、国と各都道府県が相互に緊密な連携を図ること、とされている
・認定法等に事務実施に関し、地域間の均衡を図るため、総理大臣は各都道府県に勧告等の指示をすることができる、とされている
・少なくとも経理や会計に関する事項は全国共通

実際、私のクライアントでもいくつかの法人が立入検査を受けていますが、チェックリスト含め公開されている資料を確認しておけば十分だと思います。

ただ、検査する行政庁側の勉強不足による思わぬ指摘はありますので、こちらもしっかりと制度に対する理解を深めておく必要があります。