「行政庁からとやかく言われるのはイヤだ。自分たちの好きなようにやりたい。」
このことを理由に一般法人を選択した法人も少なくないと思います。
とはいえ、一般法人への移行時に「公益目的財産額」がある場合には、公益目的支出計画を作成し、その遂行状況について行政庁に報告する必要があります。
事業年度終了後3カ月以内の提出が求められる、公益目的支出計画実施報告書です。
行政庁とのかかわりは、通常、この実施報告書に関してだけですが、支出計画の期間内で終わらない場合には変更の認可申請が必要になるなど、これ以外にも行政庁とのかかわりが出てくるケースがあります。
そこで今回は、公益目的支出計画遂行中の法人(移行法人)が、行政庁への対応が必要になるケースについて書きたいと思います。
1.実施報告書と実施完了確認請求書
実施報告書
前述のとおり、公益目的支出計画の遂行中の法人は、行政庁に対し、事業年度終了後3カ月以内に「公益目的支出計画実施報告書」を提出する必要があります。
実施完了確認請求書
公益目的支出計画の実施が完了したときは、行政庁に対し、「公益目的支出計画実施完了確認請求書」を提出することができます。
これにより、支出計画が完了したことの確認が得られると、行政庁による監督はなくなり、実施報告書の提出義務はなくなります。
逆に言えば、支出計画が完了していても、確認請求書の提出漏れ等により確認が得られていないと、行政庁による監督が続くことになります。
2.変更の届出と変更の認可申請
変更の届出
変更の届出に関しては、あらかじめ届出が必要なケースと、変更後の届出で済むケースの2種類あります。
あらかじめ変更の届出が必要なケース
多額の借入や資産運用方針の大幅な変更などを行う場合には、その変更内容について届出が必要です。
変更後に届出が必要なケース
次のいずれかに該当する場合には行政庁への届出が必要です。
1.名称、住所、代表者の氏名の変更
2.公益目的支出計画に関する次の軽微な変更
① 実施事業を行う場所の名称又は所在場所
② 特定寄附の相手方の名称又は、主たる事務所の所在場所
③ 実施事業収入・支出(予定日までに遂行完了が見込まれる場合)
④ 合併予定
3.定款上の残余財産の帰属の変更
4.定款上の存続期間、解散事由の変更
5.解散(合併による解散を除く)
6.実施事業に必要な許認可等の変更
※ただし上記2③の場合、実施報告書に次の事項を記載すれば変更の届出は不要。
□ 実施事業収入・支出の実績額
□ 実施期間に影響がないこと
変更の届出に必要な書類
かがみ文書と変更内容に応じた必要書類(変更の決定がわかる議事録や定款など)。
変更の認可申請
変更の認可申請が必要なケース
次のいずれかに該当する場合には、あらかじめ行政庁の認可を受ける必要があります。
1.実施事業等(公益目的事業・継続事業・特定寄附)の内容の変更
2.実施事業等の収入・支出の変更で支出計画を延長せざるを得ない場合
変更の認可申請に必要な書類
1.公益目的支出計画の変更の案
2.公益目的支出計画の変更を承認した理事会(及び総会・評議員会)議事録
3.事業計画書・収支予算書
4.収支の見込みを記載した書類
5.公益目的支出計画の適性性・確実性を示す書類
※3~5は変更に係るもの
実施事業収入・支出の変更があった場合のまとめ
予定日までに、
・明らかに遂行完了しない場合 → 変更の認可申請
・遂行完了する見込みの場合(※) → 変更の届出
・遂行完了するか不明の場合 → 変更の届出
※期間が短縮する場合を含む
つまり、「明らかに遂行完了しない場合」を除き、実施報告書への記載・提出だけでOKということです。
3.立入検査
立入検査
移行法人への立入検査は、定期的に予定されている公益法人と異なり限定的ですが、次のいずれかに該当する場合には、移行法人にも立入検査が入る可能性があります。
1.正当な理由がなく、支出計画の支出を行わない場合
2.各事業年度の支出が、支出計画に比べ著しく少ない場合
3.純資産額が公益目的財産残額に比べ著しく少ないにもかかわらず、
変更の認可を受けず、支出計画の遂行に支障が生じるおそれがある場合
立入検査チェック項目
一般法人(移行法人)に対する立入検査のチェック項目が、一部の行政で公開されていますので代表的なものを紹介します。
公益目的支出計画の実施状況
・公益目的のための支出をしているか、公益目的支出計画、計算書類等で確認。
・実施事業等を行うにあたり、特別の利益を与えていないか。
・実施事業資産の評価にあたり、継続使用を前提にしていたにもかかわらず条件を満たしていないものがないか。
・実施事業に係る事業費にその他事業の費用が混在していないか。
・多額の新規借入がされている場合、収支見込みに変更はないかを確認。
・正当な理由なく実施事業等の支出を行っていない場合、理由と今後の見通しを確認。
・公益目的財産残額に比して純資産額が著しく少ないにもかかわらず変更認可を受けていない場合には、将来の支出計画の実施に支障が生ずるおそれがないか確認。
公益目的財産額の算定
・移行認可申請時と公益目的財産額の確定時で、著しく金額が変動した場合には、内容と理由を確認し、支出計画が確実に実施されると見込まれるか確認。
変更認可等
・支出計画の変更がある場合は認可の有無を、変更認可申請書・認可書、計算書類等で確認。
公益目的支出計画の整備状況
・支出計画が主たる事務所に備え置かれ閲覧可能か確認。
その他業務運営
・業務運営に重大な問題があると認められる場合、関係資料及び備置書類等を確認。
・指導、勧告等に対して改善されているか確認。