収支相償対策続編。黒字原因確認⇒公益目的保有財産⇒法令上の資金、の順に検討

1週間前のブログで公益法人の収支相償対策について、検討の流れと、4つの対策のうち1つめのポイントについて書きました。

160218収支相償

今回は残る3つの対策のポイントについて書きたいと思います。

まずは前回の「収支相償対策の検討の流れ」についておさらいします。

 

<収支相償対策の検討の流れ> ※前回のおさらい

収支相償対策はいくつかありますが、次に紹介する順に検討いただければと思います。

1.収益・費用についての確認と検討

収支相償は、公益目的事業の収支差額でまず判断しますが、言うまでもなく収益と費用の差額が収支差額です。よって、収益と費用の内容と計上方法を確認するとともに、収支差額を減らせる方法がないか検討します。

2.黒字の原因と今後の事業計画の確認

黒字の発生が、恒常的な原因によるものか一時的なものか確認します。恒常的な原因による場合は、抜本的な対策の検討が必要ですが、一時的な場合には、翌期の使途計画を説明できればクリアできます。

3.公益目的保有財産の検討

公益目的保有財産の取得に充てる場合には、収支相償をクリアしたものとされます。公益目的保有財産は、車両やソフトウェアなどの有形・無形の固定資産のほか、金融資産も想定されていますが、金融資産の場合には要件が厳しくなります。

4.特定費用準備資金と資産取得資金の検討

上記1~3で収支相償をクリアできない場合には、特定費用準備資金と資産取得資金について検討することになります。ただ、資金の使途計画を中心に法令上の制約が多いため、活用は最小限にとどめたいところです。

 

<具体的なポイント>

上で示した対策のうち、今回は2~4について書いていきます。

2.黒字の原因と今後の事業計画の確認

黒字の発生原因が、恒常的な理由によるものか、それとも一時的なものかについて確認します。

① 一時的な理由の場合

例えば予定していた研究発表大会(公益目的事業)が、外部環境の理由等により中止を余儀なくされ、結果として黒字になった場合には、一時的理由との説明がつくと思います。この場合には、翌期に大会の規模を拡大する等して、今期の黒字額を上回る赤字額が見込まれる場合には、クリアしたものとされます。

この場合、拡大等の見込みについて、翌期の事業計画書及び予算書に織り込むことで、行政庁への説明がし易くなります。

② 恒常的な理由の場合

この場合、次の3,4で示す対策を検討することになりますが、これでも対応できない場合には、公益目的事業会計の収支構造について見直しをせざるを得ません。事業収益の単価引き下げや、事業規模の拡大などを含め、事業のあり方についての検討が必要ということです。

 

3.公益目的保有財産の検討

黒字額を今期の公益目的保有財産の取得に充てる場合には、クリアしたものとされます。

公益目的保有財産には、有形・無形の固定資産のほか金融資産も含まれます。新たな資産の取得や買い替えなどタイミングが合う場合には、有形・無形の固定資産の取得に充てていきましょう。

なお、金融資産については、収支相償等の形骸化を防ぐため、合理的な理由がある場合に限り認めるとされています。

<金融資産取得の合理性を確認する4つの視点>

① 事業拡大にあたり金融資産であることの必然性が明確
② 事業拡大の内容について機関決定を受けている
③ 事業拡大に要する費用と運用益のバランスが適当
④ その他、事業財源に剰余金を活用する合理的理由あり

助成事業のような事業形態を想定していると思われる取扱で、金融資産の取得によってクリアするためには、上記視点についてしっかりと整理する必要があります。

ただ、マイナス金利まで導入された現在の運用環境においては、そもそもこの取扱は機能するのか、という疑問がありますが・・

 

4.特定費用準備資金と資産取得資金の検討

特定費用準備資金及び資産取得資金の設定は、何かと法令上の制約があるため、活用は最低限に抑えたいところです。よって、これまで書いた1~3の対策で対応できない場合に検討しましょう。

いずれも資金の使途に制限をかけるものです。資産取得資金は資産の取得・改良に充てるため、特定費用準備資金は費用(資産の取得以外)に充てるために保有される資金です。

<資金の計上要件>

① 設定した活動の見込あり
② 積立限度額を合理的に算定
③ 会計処理上、特定資産として計上
④ 目的外取崩の場合、禁止又は特別の手続きの定めあり
⑤ 取り扱い規程を作成し、事務所に備置き等の対応あり

なお、災害等に充てるための資金については、特定費用準備資金としての整理が難しいとされています。要件①の活動の時期、つまり災害等の時期を見込むことが通常は困難だからです。

ただ、災害救援事業等を行っている団体が、過去の実績等から合理的な見積りができる場合には、特定費用準備資金としての整理の余地があるようですので、「災害等に充てるための資金」については検討の余地がありそうです。