公益法人化を検討しているものの、「何から手を付けたらいいか」、「どのような書類が必要で、どういうステップで検討を進めたら・・」といった疑問を抱える法人は少なくないと思います。
公益認定に限った話ではありませんが、様々な情報が溢れる今日においては、断片的な知識・情報は得られても、全体像の把握となるとなかなか難しいものです。
そこで今回は、公益認定申請に必要な書類と公益認定までの流れの概要について書きたいと思います。全ての工程を詳細に書き始めたらきりがありませんが、まずは全体の流れのイメージを掴むことが大切です。
公益認定申請に必要な書類
1 法人の基本情報や組織に関する書類
名称や所在地といった基本情報や、社員や役員の数等を記載する書類です。
2 事業の説明に関する書類
事業の種類や内容のほか、公益性について説明する書類です。
3 財務基準に関する書類
財務三基準(※)のほか、株式等の保有状況、情報開示の適正性、共通費用の配賦状況に関する書類と、「別表G」と呼ばれる会計別・事業別の予算書類です。
※公益目的事業比率、収支相償、遊休財産保有制限
4 添付書類
定款や諸規程、登記事項証明書、役員名簿のほか、税金の滞納処分を受けていないことの証明書類等の添付が求められています。
公益認定申請の手引きについては、以下内閣府のHPをご覧ください。
公益認定申請までの流れ
Ⅰ スケジュール表の作成
Ⅱ 申請内容の枠組み検討
Ⅲ 行政庁への事前相談
Ⅳ 定款・諸規程、申請書原案の作成
Ⅴ 上記案の理事会・総会承認後、公益認定申請へ
Ⅰ スケジュール表の作成
検討分野を次の3つに分けスケジュール表を作成します。
1.定款・諸規程と組織・機関設計
2.申請書の財務関連書類
3.申請書の事業の公益性の説明書類
Ⅱ 申請内容の枠組み検討
上記3分野について公益法人化後の姿をイメージし、申請内容の枠組みを検討します。
1.定款・諸規程と組織・機関設計
<定款案作成時の確認事項>
・一般法人法上必須の規定
・公益認定法上必須の規定
・規定することで柔軟な法人運営が可能になる一般法人法の規定
・規定することで財産の贈与が受けやすくなる税法関連の規定
・その他法人運営上必要な規定
<諸規程案作成時の確認事項>
・役員報酬規程 対象者(常勤・非常勤)、報酬額など
・会員に関する規程(入会及び退会規程・会費規程など)入会資格、
入会・退会手続き、入会金・年会費など
<組織・機関設計の確認事項>
次の事項について検討し、定款案に落とし込みます。
・会員の種類や、評議員、理事(代表理事・業務執行理事含む)、監事の数、
総会(又は代議員会)、評議員会、理事会の機能のほか、支部の位置づけなど
・役員の同一親族、同一団体1/3規制との整合性
2.申請書の財務関連書類
財務三基準の充足性の検討のため、次の流れで検討します。
① 事業の細分化(定款・事業計画との整合性確認)
② ①の事業と予算の紐づけ(直接収益・費用の帰属と、共通収益・費用の配賦)
③ ①の事業の公益性の検討(「公益目的事業のチェックポイント」を参考)
④ ①の事業のグループ化により事業区分案を作成し、財務三基準のクリアに向けたシミュレーションの作成(ベスト・ベター案として2~3案)
3.申請書の事業の公益性の説明書類
公益事業の趣旨・内容を的確に伝えるためのポイントを以下に記します。
① 長文 : 長文は避け内容ごとの段落分けや箇条書きで読みやすくする
② 難しい用語: 難しい用語・表現は避け、極力平易な文章を心がける
③ 専門用語 : 用いる場合は「注書き」する
④ 抽象的表現: 用いる場合は具体例も合わせて記載する
⑤ 目的と手段: 事業の目的と手段についてしっかり整理する
Ⅲ 行政庁への事前相談
検討案をもとに行政庁へ事前相談。次の事項について確認し、必要に応じ修正等の対応をとります。
1.定款に関し、支部や代議員制度、任意機関(顧問・委員会等)に対する先方の見方を確認
2.役員報酬規程及び会員に関する規程への先方の見方を確認
3.公益事業の趣旨・内容・公益性は概ね伝わっているか確認
4.その他、公益認定にあたり大きな障壁はないか確認
Ⅳ 定款・諸規程、申請書原案の作成
申請書の基本情報や組織に関する書類の作成のほか、財務関連書類に関しオンライン上のフォームへ落とし込みます。
Ⅴ 上記案の理事会・総会承認後、公益認定申請へ
定款・諸規程については、軽微な修正は会長(又は理事長)に一任することと合わせ承認を得ます。
公益認定申請後の対応のポイント
認定申請書提出後、1ヶ月位で行政庁より連絡があり、機関誌や事業に関するパンフレット等の提出のほか、事業や数値についての追加説明や求められます。
行政庁への事前相談を済ませしっかりと準備しても、あれやこれやと質問は飛んできますし、定款の「てにをは」を含め細かな修正等は求められます。
担当官それぞれに「こだわり」もあるように感じますが、①法令上の根拠と、②先方の趣旨、そして③法人の目的・意向について、しっかり確認しながら対応を進めることが、確実かつ後々後悔することなく公益認定を得るポイントです。