今さらなタイトルではありますが、
新たに公益法人化を目指している組織は、相当数あるように感じています。
社会の高度化を背景とした社会貢献に対する意識の高まりを背景に、
改革から7年経過した公益法人制度が、認知されつつあることの表れに思います。
そこで今回は、
社会貢献活動を行う組織形態の一つとして、公益法人を検討されている方や、
現在、一般法人で、公益法人化を検討されている方々に向けて、
公益法人とその制度概要について記載したいと思います。
公益法人とは
公益法人制度は、本来、行政が行うようなサービスを、
民間の組織に担ってもらうために「お墨付き」を与えるという制度です。
このお墨付きのことを公益認定といいますが、
その認定を受けた法人が公益法人ということです。
公益法人のメリット
公益法人のメリットは大きく分けると次の2つです。
1.税務上の優遇措置が受けられる
法人税の負担が抑えられたり、預金等の利子の源泉所得税が非課税になる、
といった税務上の優遇措置が受けられます。
よって、書籍販売などの収益事業で利益を上げている法人や、
寄附を財源とした基金からの運用益を収益の柱としている法人にとっては、
この優遇措置を受けるメリットは大きいと思います。
逆に、収益事業がない、又は収益事業は行っていても利益が上がる構造になく、
運用益もごくわずか、という法人にとっては、実質的なメリットはほとんどありません。
そしてこのような優遇措置の活用機会そのものがない法人は、
相当数(少なく見積もっても7~8割?)あるように思います。
2.社会的な評価が高まる
ほぼ全ての公益法人に当てはまり、
多くの公益法人にとってメリットとして大きいのは、この社会的評価でしょう。
公益法人という「冠」があることで、一般的に次のような効果が期待できます。
- 普及活動など事業の訴求力が高められる
- 会員が集めやすくなる
- 助成金や委託事業を受けやすくなる
- 寄附金が集めやすくなる(寄附者は寄附した金額の一部を所得税から差引ける)
公益認定のハードル
公益認定を受けるためには、いくつかのハードルをクリアする必要があります。
このハードルのことを公益認定基準といい、大別すると2つに分けられます。
1.事業、財産に関するハードル
公益目的事業を活動の中心に据えて、お金が余ったら将来の公益目的事業に
使ってもらおうというルールで、主に次のようなものがあります。
- 不特定多数に向けた事業(公益目的事業)をメインに行っていること
- 公益目的事業で必要以上の利益を上げていないこと
- 運転資金の保有は一定額にとどめること
- 解散する場合には他の公益法人等に寄付すること など
2.組織運営、ガバナンスに関するハードル
不特定多数(特定の団体ではなく)に向けた公益目的事業を、
継続的に行ってもらおうというルールで、主に次のようなものがあります。
- 運営の基盤(財政面・経理体制面)がしっかりしていること
- 利益供与はしないこと
- 理事や監事が同一の親族等で占められていないこと など
上記のほかに、そもそも公益認定が受けられない欠格要件もあります。
例としては、暴力団員が関与している場合などです。
公益認定までの流れ
公益認定を受けるためには、まず一般法人を設立する必要があります。
その後、公益認定を受けるための認定申請手続きを経て、
公益法人として活動できるようになります。
このように、一般法人 → 公益法人という2階建ての制度になっており、
公益法人化までの大まかな流れは次のとおりです。
1.一般法人の設立
一般法人自体は、法律に基づいて定款を作成したのち、定款の認証を受け、
役員等の構成さえ決めてしまえば、登記をするだけで比較的簡単に設立できます。
ただ、公益認定を前提としている場合には、認定申請を見据え準備しておくことで、
その後のいらぬ手間がかかるのを防げます。
2.公益認定の申請
前述の公益認定のハードルをクリアしていることを、申請書類に落とし込みます。
申請書類には、
所在地や役員の構成等といった法人の概要に始まり、公益目的事業等の事業の説明、
さらには、お金が公益目的事業に使われることになっているか等について記載します。
そのほか、定款や決算書等を上記書類に添付する必要がありますが、
申請書類の提出は添付書類を含め、全てオンライン上で提出・申請可能です。
3.公益認定のお墨付き ⇒ 公益法人
申請後、1~2か月すると担当者から連絡があり、補足説明や必要に応じた申請内容の
調整を経て、ハードルをクリアしていることが認められると、公益認定が得られます。
なお、審査にかかる期間は一般的に4か月とされています。
その後の登記を経て、公益法人としての活動がスタートすることになります。
社団法人と財団法人
一般法人、公益法人ともに、社団法人と財団法人があり、「人」と「お金」、
どちらを法人の必須の要素とするかの違いで2つに区分されています。
一般法人 ⇒ 一般社団法人 と 一般財団法人
公益法人 ⇒ 公益社団法人 と 公益財団法人
社団法人は、社員(いわゆる会員)が必須の要素で、2人以上の社員が求められます。
財団法人は、お金(財産)が必須の要素で、300万円以上の財産が求められます。
終わりに
今回、「公益法人とは?」とのタイトルのもと、公益法人の概要について
大まかに触れましたが、今後折りを見て、認定基準のハードルをクリアするための
ポイント等、少し掘り下げて記載したいと思います。