今年も残すところあとわずかですね。
3月決算の法人の方々にとっては、
今、あるいはこれからが、予算策定の本番の時期かと思います。
そこで、今回は、3月決算の法人を前提に、
予算の策定時に合わせて検討すべき項目について記載したいと思います。
1.共通経費の配賦割合(按分割合)の検討
来期の予算に、現在の配賦割合を適用することの妥当性について、検討しましょう。
人件費や事務所の賃借料などの共通経費については、スタッフの従事割合をもとに
算出した配賦割合によって、各会計・事業に配賦しているケースが多いと思います。
この従事割合が、来期も変わらない見込みなら配賦割合を変える必要はありません。
しかし、
新たな事業の開始や、既存の事業のやり方の変更などに伴い、従事割合の変動が
見込まれる場合には、配賦割合の見直しについての検討が必要です。
この場合において、
新たな配賦割合を算出した結果、現在の割合との間に相応のかい離がある場合には、
新しい割合を採用し、逆に大した差がなければ、現在のままで問題ないと思います。
<まとめ>
1.新たな事業の開始等の有無 → (なし) 見直し不要※
↓ (有り)
2.従事状況の変動の有無 → (なし) 見直し不要
↓ (有り)
3.新たな配賦割合を算出
↓
4.現在の割合とのかい離の程度 → (大差なし) 見直し不要
↓ (相応の差あり)
5.新たな配賦割合の採用
※1.新たな事業の開始等がない場合でも、2.従事状況の変動があれば、3.へ
2.財務三基準の充足性(公益法人の場合)
公益認定基準の代名詞的な存在の財務三基準。(以下三つの基準)
・公益目的事業比率50%以上
・収支相償
・遊休財産保有制限
公益法人化後は、決算数値をもとに基準の充足性を判定することになりますが、
そもそもの予算の段階で基準を満たしていない場合には、やはり問題です。
これに関しては、
うっかりミス!?等で、基準を満たさない予算を提出しているケースがあるようで、
提出期限が近くなると行政庁サイドから注意喚起のアナウンスが出されています。
予算策定時の必須のチェック項目として、しっかり抑えておきたいですね。
3.今期の収支相償対策(公益法人の場合)
公益目的事業が黒字の場合には、その黒字を解消するため、翌期以降の使途計画
について、定期提出書類の中で説明する必要があります。
そこで、予算の策定時点において、
今期の公益目的事業の黒字が見込まれる場合には、来期の予算に、見込み値を基に
使途計画を盛り込むことで、要件の充足性について具体的に示すことができます。
この場合、
公益目的事業会計以外の会計も含めて、決算見込み額の算出が必須になりますが、
先にわかっていれば、採れる対策は増え、余裕を持った対応が可能になります。
何事も、先手必勝。
収支相償対策に限った話ではありませんが、第三四半期の数値をまとめる頃までには、
ある程度信頼できる「決算見込み額」が算出できる仕組みをつくっておきたいですね。
4.消費税の納税見込み額と計算方法の確認
1)納税見込み額の算出
来期の予算策定時に、消費税の納税見込み額も算出しておきましょう。
そもそも、納税見込み額の算出なしに、消費税の予算は立てられませんが、
公益法人等の消費税計算は、特殊でややこしい等の理由から、
「前年並み」で計上してしまうケースが少なからずあるように思います。
収支の状況にあまり変動がなければ、基本的には、
この方法でも運営判断を誤るような事態にはならないと思います。
しかし、
来期に税率改正が控えている場合など、外部環境に変化がある場合、話は変わります。
平成26年4月から消費税が8%に改正されましたが、その年の決算の消費税額について、
予算とのかい離に、「ハッ」とされた法人は少なくないと思います。
(消費税を発生主義で計上している場合。現金主義の場合は影響が出るのは翌期から。)
なお、消費税率10%への改正は、今のところ平成29年4月からとされていますので、
来年の今頃に検討する平成30年3月期の予算では、10%で納税見込み額を算出する
必要がありますね。
2)計算方法(課税方法)の確認
前期(H27.3月期)の課税売上が、1,000万円超~5,000万円以下の場合には、
さらに注意が必要です。
この場合、翌期(H29.3月期)の消費税の計算は基本的に、原則的な方法と簡便的な方法
の、いずれか有利な(納税額が少ない)方法を選択できますが、どちらを選択するかに
ついては、今期の末日(H28.3/31)までに、税務署に届け出る必要があります。
つまり、予算策定時に、納税見込み額を算出・比較し、有利な方を届け出ておけば、
納税額を抑えられるということです。
なお、原則的な方法と簡便的な方法の扱いや、具体的な手続等については改めて記載
したいと思います。(大分、文章のボリュームが増えましたので)
また、ここでは消費税についてのみ触れましたが、法人税法上の収益事業で利益が
出ている場合には、法人税等についても見込み額を算出しておきたいですね。
終わりに
弊社は、今日が年内の最終営業日です。
最後になりましたが、今年1年ありがとうございました。
今年の8月より税理士として開業し、あっという間の5か月、そして1年でした。
開業当初は、先を見据えた行動をとの思いとは裏腹に、目先の業務に追われ、なかなか
思い通りにいきませんでしたが、最近ようやく、整理できるようになってきました。
皆様のお役に立つようなブログを発信するため、来年は情報の整理と合わせ、様々な
角度からの視点、ビジュアルな伝え方についても研究していきたいと思いますので、
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
良いお年をお迎えください。