事業費と管理費を適切に区分することは、
単に正しい会計処理をするというだけでなく、次の点からも非常に重要です。
公益法人の場合は、財務三基準の判定に大きな影響があり、
公益目的支出計画を遂行中の一般法人(移行法人)の場合には、
支出計画の遂行完了年度に影響があるからです。
重要性の高い「事業費と管理費の区分」ですが、
十分に検討されないまま保守的に処理され、結果として管理費が過大に
計上されているケースを相談会等で少なからず見かけます。
理由としては、概ね次の3点に集約されると思います。
該当する場合には、あらためて管理費の中身について確認されることをお勧めします。
1.管理部門の経費を、全て管理費計上しているケース
管理部門で発生する人件費・家賃・光熱水費等は、実態に応じて事業費に算入できます。
事業費の定義について現在の公益法人会計基準(20年基準)では、
事業に直接かかわるもののほか、
事業遂行に伴い間接的に発生するものも、含められることとされています。
しかし、一つ前の会計基準(16年基準)では、
事業費として計上できるのは事業に直接かかわるものだけで、
事業遂行に伴い間接的に発生するものは、管理費計上が求められていました。
よって、この考え方で区分すると、管理費が過大(事業費は過少)に計上されるため、
現在の公益法人会計基準に照らした区分の検討が必要です。
2.申請時の時間的制約
移行申請の時もそうでしたが、
公益認定申請は、時間との戦いにならざるを得ないケースがあります。
次の事業年度の開始に合わせ、認定申請を進めるケースがほとんどだと思いますが、
期間が残り少なくなってくると、少しでもスムーズに進めるため、
行政庁の意向に合わせ保守的な処理をしがちです。
例えば、税理士の顧問報酬について、公益事業会計の事業費に配賦計上したものの、
事業との関連性に関し追加説明が求められた時点で、「やり取りに時間を取られるなら」
との理由から、全額を管理費計上してしまうケースです。
この場合、事業との関わりを整理・説明することで、合理的な額を事業費計上することが
可能と思います。
3.行政庁による指導
「他団体への会費は管理費」というように、申請時に根拠なく指導されてしまうケースがあります。
この場合、入会する他団体の活動が、会費を支払う法人の公益事業の趣旨に合い、
入会を通じ得られる情報等が公益事業の活動に寄与する場合には、
公益事業会計の事業費として計上することの説明はつくはずです。
しかし、申請時にいくら説明しても全く聞き入れられず、
管理費計上せざるを得ないというケースです。
こうなると申請後に定期提出書類を通じ、行政庁へ説明していくほかありませんが、
本来的には事業との関連性を示せれば、合理的な金額の事業費計上は可能と思います。
終わりに
「管理費が多すぎる」か否かについては、
管理費の割合(※)が5%~20%の範囲かどうかが、大体の目安になると思います。
※法人全体の経費に占める管理費の割合
この範囲を超える場合には、管理費の中身を再確認されるのがいいかもしれません。